GOLDEN AGE ~追跡屋TAG~

自作の連載小説をあげていきます。

第2章 追跡開始:無彩色に揺れる白

006 依頼②

「父が最後に言ったんです、『中身はいざという時まで使うな』って。それってもしかして、いざという時は使えって意味だったのかなと思って。それにあの時は他に方法もなかったし、どうせ捕まるならと……」 自分で言っていて、あの時は本当にどうかしていたと…

005 依頼①

鬼灯は、交通事故のニュースについては知らなかった。「しょうがねえだろ、さっき起きたばかりなんだから」 そう言い訳をするが、「また遅くまで飲んでたんでしょ」と璃々に指摘される。 どうやら翼斗が璃々とこの事務所を訪れた時には鬼灯はまだ寝ており、…

004 鬼灯鹿目

うちの娘、と呼ばれた少女は、男が隣にいるためか、先ほどよりは警戒を解いたようだった。 改めて見ると、刹那とその少女が別人であることはすぐに分かった。髪の長さが違うのだ。刹那は肩下まで伸ばしていたが、その少女は肩までもないボブカットだった。切…

003 コヨリという少女

裏口を出て真っ直ぐ進むと、八百萬ジャンク・ショップと同じ敷地内に古い平屋が建っていた。周囲は背の高い塀で囲まれている。「さて、ここから入るよ」 そう言って璃々は平屋の扉を開けた。 小上がりのついた玄関である。そこからいくつかの部屋に繋がって…

002 八百萬ジャンク・ショップ②

「あの、誤解です。ポケットに手を入れたのは武器じゃなくてメモを取るためで。柏木さんに描いてもらった地図です。それを見てここまで来たんですよ」「地図?」「ええ、地図。地図とは思えないですが地図」「ふぅん? じゃあ君、ゆっくり、その手を出しなさ…

001 八百萬ジャンク・ショップ①

翼斗は立ち尽くしていた。 地図で示された場所に、ようやく辿り着いた……はずだった。 しかしそこにあるのは、どう見ても、ただの古ぼけた商店だった。 さかのぼること半日前。 墓地を後にした翼斗は、疲労がピークに達していたため、陸に教えてもらった安ホ…

前章までのあらすじ&登場人物紹介

《前章までのあらすじ》 柊翼斗は脳科学者である両親のもと、地上で平穏な高校生活を送っていた。 しかしある日、その日常は一変する。 家族を失った翼斗は一人、目的を見失い、東京の大地下空間であるアンダープレートへと流れ着く。 そこで反社会組織REVER…